今週の収益改善の視点 641号:「なぜ、患者を増やせと言うのを止めたのか?——ある急性期病院経営者のホンネとは?」
導入以来、一度も下がったことがない消費税を、政府は食料品の消費税を8%から1%に引き下げる方針を閣議決定しました。
「絶対に下がらない」と誰もが思っていたものが下がる。
この事実に、「動かせないはずのものは、案外動かせるのかもしれない」——そう思われた方も多いのではないでしょうか?
もちろん「税率を動かせば、それだけで良くなる」わけではありません。
それでも、うまくいくかどうかは、やってみなければ分かりませんし、思考停止せず、疑ってみることはビジネスにとって肝となる部分です。
失われた30年、ずっと動かなかったものが、なにやら動き始めているといえるでしょう。
先日も、
「患者数を増やせ!と職員に言うのは止めたのです」少し前に、セミナーにお見えになった、理事長さんからのご相談です。
お話をお聞きすると。これまでは、外来や紹介患者にとにかく対応し、病床稼働率を上げる。それが病院経営のセオリーだと思っていたそうです。
ところが、2026年の改定を受け、方向変換されたそうです。
なぜなら、評価されるのは「何人診たか」ではなく、「どれだけの人数でやったか」ということになったからです。
おっしゃる通り、救急搬送件数、手術件数、在宅復帰率といった患者数の多さより、人を増やず、どうするか?という状態になってきており、病院でも生産性が求められています。
一方、インフレで物価は上がり続けてるなか、職員の給料をこれ以上簡単には上げられない。多くの病院経営者は頭を抱えておられます。
見方を変えますと「生産性をどう上げるか」について、とにかく出来るとこから始め、結果を出す方法さえ見つけることが出来れば、他と一線を画すことが出来るということです。
すでに、ある急性期病院では、「院内の業務量を改善するため、業務を見える化」に数年前から着手されています。
こちらの病院では、次々人が辞めていくといったことが起きていて、弊社にご相談にお見えになりました
長年、各個人に任せたやり方でやってきたものの、人が抜けたことで業務が遅延し、人間関係がぎくしゃくしていました。
今だから言えるのですが、経営が仲介に入っても解決の糸口が見つからない最悪の状態だったのです。
そこで、問題になっていた部署を対象に、業務の流れを書き出してもらい、そこから、どうしたいのか?について、話し合う場を月に一回設けることにしたのです。
その内容をもとに、そこからスケジュールを作り直そうとすると、十分足りるはずの人員が揃っているのに、なぜか人員が足りていない。それに対して現場が不満をもっていたことが分かりました。
メンバーの方と一緒に再度調べていくと、通常の医療業務以外に、○○委員会というのが月40個以上あることがわかり、その時間が全体の3割を占めていることが分かったのです。
そこで、乱立していた委員会を、中身が重複するものを統廃合し、委員会を新設する場合は承認制にすることにし、委員会の議事録もAI化し、取り組み実績も、医局のモニターに流すなどし、集まらなくても情報共有できるようにしました。
これによって、まず委員会の数を2割減らし、年間500人時を減らすことができたのです。
また、業務流れを可視化し、「誰が何をするのか」が明確にしました。業務の偏りや遅延原因が分かるようになったことで、人間関係が改善され、結果、患者満足度の向上にもつなげることができ患者数も増え始めました。
人が辞めていく事態を重く受け止め、業務内容を調べ始めたわけですが、それが、少ない人員で病院を運営していくきっかけになったということです。
振り返って、あなたの病院ではどうでしょうか?
医師や看護師個人に任せたやり方は、働き手がたくさんいた時代は通用しました。しかし、今は、働き手が少ないため、各自が行う業務は爆発的に増えています。
こうした状況に対応するため、医師や看護師個人に任せるやり方をやり続けるか?
それとも、経営が関わっていくかどうかで、生産性の結果は全く変わる。ということです。
そうした病院経営者を全面的にサポートするのが 弊社の役割です。
著:伊藤 稔
