今週の儲かる繁盛店の視点 第584話:「なぜ、労働集約ビジネスで人時の視点が欠けた投資がダメなのか?人時生産性で改善力のある病院とない病院の違い」

「ここのところ優秀な人材が辞めていくんです」とある病院の経営者からのご相談です。
お話をお伺いすると、がんばってくれていたベテラン医師が退職され、外来患者が2割も減ってしまったそうです。
病院にかぎらず優秀な人材が辞めていく理由はただ一つ その時の経営者への失望です。
そもそも優秀人材の入社動機は、社長の経営ビジョンであったり、その社長生き方に共感したといった、社長自身そのものです。
先の病院は、新規サービスや新施設をつくり売上を増やすといった大型投資が、経営の安定につながるとして規模の拡大をしてきました。
ところが、数年赤字が続いていて、様々な高額機器や施設に次々に投資がされるものの、手間がかかる割に収入が増えていかないことが影響してるのではないかとのこと。
病院のような労働集約型産業が、新しい施設を作り、高度医療機器や設備投資をするというと銀行も融資をしてくれます。
ところが、これが利益悪化を招いています。
なぜなら、労働集約型産業は、人をどう使いこなしていくか?によって利益を生み出すこと得意とする業種だからです。
その基本は、利益が上がらない事業から上がる事業に人を移動させ、利益アップしていきます。
売上が下がっている時に、ここに手を付けず、高額設備投資を実施すれば、返済に追われ利益は悪化してしいく、ということです。
具体的には、利益の最も高い部局の人員配置を優先にしていくわけですが、もし、ここを疎かにして、目先の売上欲しさに、新事業を立ち上げたり、高額機器を使った新サービスを提供したらどうなるか?
人材教育が追い付かず、新事業は計画未達、高額な新しい設備もつかいきれず、価値を提供することができないまま、人件費とメンテナンスコストだけが増え、収益率を悪化になるのは火を見るよりも明らかだからです。
問題は、そのしわ寄せは、既存の儲かっている部局から人員減で収益低下と、新規事業やサービスの未達で、ダブルでマイナスになっていくということです。
現場はそういったことを日々体感していることから、違和感を感じれば、早々に見切りをつけ、退職者が増えるのは当然のことと言えるでしょう。
ーーーー診療報酬が実質低下してるなかで、人時生産性を使うことで、病院の収益力をあげていきたい。それゆえ、ご相談にお見えになったコトかと思います。
確かに、社会保障の問題で今後も診療報酬は上がることは考えにくく、売上増は難しいですが、人時生産性は上げることは出来ます。
極端な言い方をすますと、同じ売上ならば8割の人員でそれを実現させることが出来れば、利益は2倍になります。
もっといえばこれが半分の人員でできれば、5倍以上の利益になるということです。
ようするに、少ない人数で今と同じかそれ以上のサービスが提供できることに投資する。これこそが、病院経営の生き残る道ということです。
具体的には、今 院内で行われている業務を洗い出し、それにどれぐらいの時間がかかっているか?を調べていきます。
そもそも、現状の人員体制では、一日あたり何人まで外来をうける機能があるのか?そういった視点で調査をおこなうわけです。
その日の売上を人時(ニンジ)でわることによって、その医院トータルの人時売上がどのくらいであるかを算出し、曜日ごとに人時数を最適化させていくことによって、必要人時数を設定していく訳です。
(※人時とは一人当たり時間作業量のことで、労働時間を表すと同時に作業量を表す単位です)
もちろん同じ日は一日もないわけですが、しかし、今まで、来るもの拒まずで、闇雲の受け続ける体制で、残業になったり、暇な日があっても、同じ人員体制、勤務時間でやっていればコストを下げることはできません。
少ない人員で 確実にサービスを提供していくには、毎日どういった人員体制でやればいいのか?経営として、人時を使った作業指示書が必要になってくるということです。
人時作業指示書とは、作業に対して人をつけていく手法ですが、
人に作業がついている「出勤シフトによる作業割当」とは違い、仕事が無いとこには人がつかないようになっているため、現状のよりも少ない人員で運営できるようになるという大きなメリットがあります。
まずは、最初にこれを使い、具体的にどの部分にこれから先に、投資をして少ない人員で回せばいいのか、先を見据えていくということです。
売上が減ってるのに、高額医療機器の返済がおわるころには更新料が永遠にかかるものに投資するのと、人時が確実にへって利益はすぐ上がることに投資するのと、どちらが得か一目瞭然ということです。
つまり、労働集約産業は、その投資で人時売上高がいくらあがるのか?その考え方ができるようになれば、投資に失敗することはないということです。
さあ、貴社では まだ、機器や設備に優先的にお金を掛け利益を減らし続けますか?
それとも、人時生産性上がることにお金を掛けることで、医師、看護師、医療スタッフが働きやすくする経営で安定成長を手にしますか?
次に、この手法で、成功を手にするのは病院経営の長であるあなたの番です。
著:伊藤 稔