今週の儲かる繁盛店の視点 第253話:「逆風時の考え方で成長するチェーンと失敗するチェーンの違い」
「先生、前回の増税の時は本当に大変だったんです。お恥ずかしながら納税資金が足りなくなりそうになったのです。今回は、同じ失敗をしないために、人時生産性を何とかしたいのです」
とあるチェーンの経営者からのご相談です。
すでに、消費増税までのこり数カ月となりました。注意すべきことは、前回の時と企業をとりまく環境が大きく変わってくるということです。
価格に反映できる商品以外の水光熱費、物流費、販促費といった経費は自動的にあがります。
そこに、人手不足と年次有給取得の義務化が重なり、このままいくと人件費増もコストアップになるということです。
一方で、消費環境はご承知のとおり人口減が加速化し売上は落ちています。政府主導のキャッシュレス化によるポイント還元といった、追い風はあるものの一律であり限定的なものです。
人件費がまだ低く抑えられていた頃、労働分配率の高いチェーン各社は人海戦術で、過去3回の消費増税をなんとか乗り切ってきました。
少子高齢化により先細る売上と上がり続ける人件費に、チェーン経営の本質的なあり方から考えなおしていなくてはならない局面にきているといえます。
経営者の皆さんであれば、お気づきのこととおもいますが、これは人手を増やせば解決できるという簡単な問題ではないということです。
「それがわからないから 困っている」という声が聞こえてきそうですが
――――お客様の声に 耳を傾けそれを新サービスに変換させるしくみはありますか?とお聴きすると
「お客様相談室はありますが…」
――――クレーム対応といった後追い型でなく、顧客生活にプラスとなるものを先んじて提供することです。
言い換えますと、物販売上以外で収入拡大を行う、独自の新しい収益モデルを作っていく準備をしていますか?ということになります。
例えば、売場ごとの月間お薦め情報がスマホを通じてお知らせが入手できる仕組みや、店内の混雑状況のお知らせや、忙しい方向けのピックアップサービスといったサービスを有料会員として提供できるものにしていくといったものです。
人手が必要となることから、現状の人員の中で、人に仕事がついているものを仕事に人をつけていく仕組みが必須となります。
「うちでは それに近いこともやってる」という声が聞こえてきそうですが
―――では、それが明記されている企画書と組織図と作業指示書を見せて頂けますか?
と聴くと、皆さん「う~ん」と言葉に詰ります。
こういったことがルーティンの業務としてスケジュールが紙に書かれ、それにもとづき人が動く仕組みがあるか?ということです。
店舗改装には 何千万何億というお金をかけて改装します。同様にこうした新たな収益の仕組み作りについても投資は必要です。
というと経営者の皆さんは「あたりまえじゃないか その通り」と大きくうなずかれます。
ところが実務的な話になると、多くの経営者は「既存の組織の中でできないか?」とか「はじめは兼任体制で?」とか「既存のシステムウエアを流用できないか?」といった無料で出来る事ばかり探そうとされます。
そもそも、兼任業務ができるほど一人当たりの作業時間に余裕があるのならまだしも、ほとんどのチェーンは、本部スタッフの時間外労働は店舗以上に深刻な問題です。
そんな中で、兼任で、外部委託せず、投資ゼロで、自社でやろうとすれば、常識的に考えて「実現出来ない」か「何十年という時間がかかる」ことになります。
趣味として人里離れた 古民家を10年かけて自分リフォームするならともかく、企業経営の見直しとなれば、骨子をつくるとこからはじめ、生産性の高いものを作り、継続していくこととなるわけです。
これから年間数千万~億の資金を得て成長を遂げてくために、組織も持たず、投資も経費もかけずに、出来るわけがありません。
実際に貴店の店頭に立ってみればわかることですが、かつて店舗改装で大型チラシを訴求して、朝から喜んで来店してくれた世代のお客様の姿は、そこにはないということです。
すでに、ご高齢のためお一人で、お店に買い物に来ていただくことが出来ない方が増えているのは火を見るよりも明らかです。
これからは、高齢者を支える、少ない若い世代の方々にとって役立つ店づくりに変換させていくことが重要になってきています。
ご自身や家族の健康に留意した、食材の提供やその作り方のノウハウといった、新たな世代の顧客利益のための独自の企画づくりに取り組まなくてはならないということです。
単に、メールアドレスを何万件もっていたところで、こうした、顧客利益の拡大するメニュープランを持っていなければ、昔ながらの価格訴求のチラシをメールやHPで掲載しているだけで何も変わっていかない。ということです。
「そういったことは大切なのはわかるが やる時間も人もいない…」という声が聞こえてきそうですが
大事なことは、儲かっていな作業で隙間なく埋められっている現状の作業内容を洗い出し、今やっている業務にスキ間をつくることです。
そこを一旦引きしめた上に、新たなサービスを足していくので、全ての場面で経営の関与が必要となります。
経営が業務改革に関与しなくてはならないもう一つの理由に、まじめな幹部ほど、何かやっていないと「さぼって見える」とか「暇そうにみえる」ことを気にし、今までやったことを変えないまま、隙間時間を埋めようとするということです。
人は、作業がないと不安になるのは 人間の性といえます。作業指示書が無い状況で、暇な時間ができれば「やり残した仕事」「普段できない掃除や倉庫整理」「報告書作成」etcいろいろな作業が始まります。
経営が確認できる作業指示書がなく、個人に依存しているチェーンほど業務は増え続けるのはこのためです。
その証拠に、客数の多い日も少ない日も、働いている人員がほとんど変わらないという事実があります。
こういったことは、どこのチェーンでも起きていて、毎年何もしなければ、人件費が増え続けるのは、むしろ当然のことといえます。
今、現場で365日繰り返されている業務のひとつひとつが、本当に利益になる業務になっているか?逆風の立ち位置にいるからこそ見極めることができるといえるでしょう。
何にでも乗じて売上をとる時代は終わりです。顧客本位の商売の在り方とそれを仕組みで稼ぐ新たな時代の幕開けです。リーディングカンパニー実現にむけ頑張ってまいりましょう。