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今週の儲かる繁盛店の視点 第348話:「改善事例を真似て業績が上った話を聞いたことがありません。成長企業が改革の柱とするのは事例ではなく○○です!」

「先生、いろいろやったんですけど、人時売上を上げるのに、近道はないということですよね」とあるチェーンの社長さんの一言です。

聞くところによると、人時売上について月に一度、話し合いはしてきたものの、一向に改善が進まない。それに業を煮やされた社長さんご自身がセミナーに参加。その1カ月後プロジェクトはスタートしたのです。

なんと、せっかちな社長さん…と思う方もおられるかと思いますが、社長が指示を出して、一カ月経って何も変わらなければ、その先進展することはありません。と申し上げています。

自宅を新築する時、自分たちで建てたりせずに、建築会社に発注します。車も乗る為にゼロから作る人はいません。パソコンも自ら組み立てる人もいません。そんな、あたりまえのこと…と言われるかもしれませんが、

生産性を上げることも同じように、店の運営のことは分かっても、本質的な収益構造を変えていく方法が分からない人に、「改善策を!」「生産効率を!」と要請したところで、いつになったら始まるのかもわからないということです。

言い方を変えますと、幹部社員が、分からないことに悩んだり、改善事例を探す時間は1円も利益も生まないということです。この業務ロスをなんとか断ち切りろうと、先の企業の社長は自ら動かれた「その決断は正しかった」ということです。

プロジェクトの開始では、幹部社員の皆さんの前でお話しをさせていただきます。初めて皆さんとお会いする場では「何とかしなくては…」という感じの方もいれば「何か、面倒くさいことが始まるのだろうか…」といった、不安と疑問が入り混じった何とも言い難い雰囲気が漂っています。

ところが、これが数カ月経ちますと、「これをやり遂げたら、凄いことになるのでは?」とか「こんなことやってもいいんだ!」という意見が出来てきて、プラスの方向に動きはじめ、各自の表情が活き活きとしてくる。ということです。

社長が議長をつとめるの定例会議では、中々意見は言い出しにくいもの、一方でプロジェクトの場合、進行は我々が行なわせていただくことから、社長も含め誰もが同じ立場で意見を交わす事になります。

そういう環境においては、普段垣間見る事の出来ない、部下の言動や行動からその成長を知ることが出来ます。

実際に、プロジェクト期間中のメンバー昇格は珍しくなく、それが各自の意識を高め、必ずしや大きな企業貢献をもたらしてくれることになります。

プロジェクトがスタートすると、必ず問題になるのが、「言葉の問題」です。「言葉遣い」が良い悪いということではなく幹部社員としての「文章力」が問われるということです。

例えば、店舗現場の方にヒアリングをして、作業量の多い業務や、非効率的な会社のやり方のような項目について、一枚の紙にまとめていくという現状把握をやる手法があります。

これを プロジェクトメンバーの方にまとめていただく訳ですが、それが、何を言っているのか?意味不明なことだらけの文書となって返ってくる、ということです。

――――なぜ、企業の幹部社員の皆さんがこんなにも文章が書けないのか?

その背景に、小売業に携わる人は、文章の書き方や企画の取りまとめ方を 教わる機会がほとんど無いということ関係しています。

どの企業でも本部から出された指示書や、連絡文章の中には、「これは一体、何を言っているのだろうか?」と意味不明のものが多く、本部に何度も電話をして確認しなくてはならないものがあります。

こういったことが、長年続きますと、発信するほうは文章に気を使わなくなるだけでなく、受け手となる店長が、ちゃんと読んで理解するという読解力まで失われます。さらに、本部と店舗の関係は疎遠になっていくこととなり他人事のように社内が空回りし始めます。

実は、破綻寸前の前職企業でも当時同様のことが起っていました。その最前線にいた伊藤もそのひとりでした。功を奏した店での取り組みが幸運にも認められ、店長から店舗統括になり、立場が変わった時、この重みに気づくこととなります。

全社の業務改革を統括する立場の者に求められる、スピーチ・プレゼン、指示文章、連絡案内に至るまで、発信側としてその「文章力」がその日から問われるわけです。

ビジネス書すら読む習慣が無かった私は、お恥ずかしい話、本当に苦労の連続でした。そこで自らが話す文章をノートに下書きし、深夜何度も声に出して読み上げ気づけば朝。それでも会議では言いたいことが伝えられず、全く相手に納得してもらうことが出来なかった苦い経験の持ち主です。

なぜ、伝わらないのか?こうして突き詰めていくうちに、少しずつ見えてきたのは、これまで、当たり前に使ってきた「業務項目」の意味が社内で統一されてないからではないか?という重要性に気づくことが出来たということです。

「品出し」とは?「仕分け」とは?「発注」は?…といった具合に全て定義していく訳です。

「えっ!そんな、分かり切ってること今さらやる必要あるのか?」という声が聞こえてきそうですが、

中々言葉で表現するのは難しいのですが「常識を疑え」という言葉があるように、今の自分のやり方があっているのかどうかを確認するには、自らが書く文章と向き合うことが大切であるということです。それにより頭の中が整理され、現場を動かす文章が書けるようになるからです。

もちろん、それで、相手が直ぐに動いてくれるわけではありません。しかし、真意が確実に伝わることが、大前提なのはいうまでもないということです。

日本の商習慣は、江戸時代、丁稚奉公し下働きから…という商文化があって、そこでは「習うより慣れろ」「一回言ったら憶えろ」といった、ベテランの技を口頭での伝えるやり方が重視されてきました。

それが、今の小売りの原点であることは事実です。

これから先の商売に求められる、人時生産性という点から見ると、数人の家族経営のお店であればまだしも、数百、数千人規模の従業員を抱えその生産性を上げようとするとすれば、口頭指示だけで、生産性をあげることができるのだろうか?ということです。

実際に、取り組まれている企業では、業務項目を明確に定義することで、曖昧な指示がなくなります。「私はそう思わなかった」とか「聞いてる、聞いていない」といった行き違い、勘違い、食い違いも無くなります。

これにより、プロジェクト側の時間や手間は大きく削減でき、業務が進展することから、その表情が明るく前向きになるのは当然のことと言えます。

改革を進めるメンバーが、暗い顔をして悶々としてれば、お店も暗くなり、お客様に良い状態で対応することなどできないのは申し上げるまでもありません。大事なことは、「口頭」で伝えるやり方から「文章」で伝える。ことであり、これが社長をはじめ幹部社員ができるようになった時、全社へその手法を波及させ同じ成果をもたらすようになるということです。

さあ、貴社では まだ、口頭指示にこだわりますか?それとも優れた「文章力」を有する企業となり、他と一線を画し大きく飛躍しますか?


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