今週の儲かる繁盛店の視点 第580話:「チェーン小売業として客数減少問題を放置した企業の行きつく先は?」

6月入り、おコメの年間需要を超す数量が供給されることが明らかになり、徐々に銘柄米も市場に出始めました。
これにより、価格は下がっていくでしょうし、順次地方へと広まっていくことと思います。
ふと気づけば、コメ高騰の陰に隠れ、今月も食品の大幅値上げが行われています。それも今年の年間値上げ品目数は1.4万品目と、2023年の1.2万品目数を大きく上回る計画が発表されています。
今回の値上げで注目すべき点は
昨年同時期6千品目であったのに対し、今年はすでに2倍近くの1万品目の値上げが実施されている点です。
ところが、皆さんの店舗売上はどうでしょうか?
単価がアップしても、客数の減少によって売上そのものがあがらなくなっているということです。
このままいくと、再び、増収減益が繰り返されるか?一歩間違えると、減収減益になりかねない、ということです。
先日も…
「先生、こういった値上げの時代だからこそEDLP(エーブリディ・ロープライス)をやりたいのです。」セミナーに参加された社長さんからのご相談です。
お話をお聞きすると、チラシを止めて、ポイント付与日程を拡大し、にわかEDLPをやられたそうです。
しかし、業務量は減ったものの、売上も減ってしまい、耐えきれずもとのハイアンドローの販促に戻されたそうです。
ウォルマート西友のEDLP導入にかかわってきたものとして言えるのは、EDLPは確かに強いプログラムですが、時間とエネルギーもかかることから、にわかではうまくいかない。とはっきり申し上げています。
実際にお手伝いさせていただいている企業では、本物のEDLPに近い形で、買い物かごいっぱい買っても競合より安いEDLP方式を行っています。
その威力は歴然で、中には、店舗利益を5~10倍近くまでのばされている店が何店かあります。そういった中のひとつに、導入前、ギリ赤字の店舗がありました。
社長曰く、これでだめだったら閉鎖する。といっていた苦戦店です。
そこでは、人に作業がついていた従来の作業割当表から、作業に人をつける人時作業指示書に切り換えることから着手しました。それをもとに、非効率業務を改善する準備を進めていったのです。
そして、ある程度準備が整ったところで、EDLPをスタートさせてみることになったのです。
いざ、ふたを開けてみると、思いのほか好調で、赤字ギリギリだった状態から、年間利益1千万を余裕で突破しそうな状況になったのです。
これに驚いたのは、社長さんご自身ですが、店舗、本部も一緒で、社内は一気に明るく活気づいていったのは容易に想像できるかと思います。
今では、この店をモデル店として、多店化計画が着々と進められています。
「一体、何をやったのか?」という声が聞こえてきそうですが、
少し触れますと、・・・
ウォルマートのやっているEDLPは「いつでも、欲しい分だけ、安い価格で提供できる」というのがコンセプトです。
なので、
なぜ、現状お客さんが減ってるのか?その原因を調査していきます。
例えば、開店時に品出しが間に合っていなかったり、夜8時以降の商品が売りきれて何もなかったり、レジでお客様を待たせていたり、そういったことを作業指示書上でどこに問題があるのか?を特定し潰していきます。
そして、ここから生み出されたコスト改善額を確認させていただいた後にEDLPを始めていきます。
さらに「準備をしてから価格を下げてる店」と「価格だけを下げる店」を比較し、結果が変わってくることも知っていただきます。手追抜かずにやれば、再現性が高くなることを理解してもらうためです。
セミナーでこういう話をしますと、参加された方から「その企業を見せて欲しい」とか?「勉強したいので相手の社長に話をさせて欲しい」というご相談や問い合わせをたくさんいただきます。
残念ですが、そういったことは控えさせていただいております。とはっきり申し上げています。
たとえて言うなら、トヨタの工場を見ても真似できる企業はありませんし、また、アメリカ小売業研修ツアーに参加してもウォルマートのマネできる企業が一つもないように、成果に結びつかない行動は、企業にとってマイナス以外のなにものでもないからです。
外から見てまねできるくらいの手法ならすでにどの企業でも、出来てるはずだからです。
語弊を恐れず申し上げれば、EDLPの本質を理解せず、素人がみても、どこがEDLPなのか?見抜くことが出来ないものだからです。
それだけではありません。
EDLPは、競合からは悟られずに、表立って告知しないことが戦略になっているからです。
私たち小売業がやるべき最も大事なことは、この先、上昇するコストをいち早く吸収し、すばやく商品価格に反映させお客様の心を掴むことです。
これまで、みなさんがこれまでやってきた、一過性割引は通用しません。収益構造改革の準備を今始めなければ、間に合わないということです。
さあ、貴社では、まだ、EDLPをお勉強として崇めていきますか、それとも、自社の強みとして生かせるものにして、成功を勝ち取りますか?
EDLPについては 今回限りの特別限定セミナーを7月に開催します。以後の開催予定はありませんので、この機会をお見逃しなく!
著:伊藤 稔