今週の儲かる繁盛店の視点 第602話:「なぜ、病院の収益率が上がらないのか?自力で人時生産性改善ができない病院の行く末は?」
「病院0.1% 診療所6.4% 経常利益率に格差 財政審、」と先週の新聞に出てました。来期の社会保障分野の予算編成、いわゆる診療報酬への予算配分がどうなる?初会合が始まり、医療経営者の方々にとっては大変気になるところです。
この経常利益結果をうけ 来期予算の行方はどうなるかはわかりませんが、なぜ、このような結果になったのか?そこからどうすべきか・・・ということは垣間見ることができます。まだ、チャンスはあるということです。
背景には、人口層の厚い団塊世代が後期高齢者になり 自分の足で病院まで来られなくなったことが大きく影響してます。
そこにきて、コロナを機に多くの患者が大病院での診療の混雑が避け、小回りの利くクリニックの訪問診療を活用するようになっていったことが見えてきます。
特に、急性期病院は、これまで多くの団塊世代の患者に支えられてきたわけですが、そういった患者が減ってるのに、人員体制を見直しすることが遅れたことが影響しています。
なんといっても人件費比率が6割というのは、労働集約産業のなかでも突出した数値です。外食で25%、小売業でも13%ぐらいのなか、この人件費の中身を根本的に変えない限り、収益は全く改善が見込めないからです。
こういいますと・・・
- 医師や看護師、検査技師など何人もの専門職が関わっている
- 患者さんの症状も一人一人、診察までにかかる時間も変わる
「人件費が高くなるのは仕方ないんじゃないか」という声が聞こえてきそうですが・・・
もちろんそれを否定するつもりはありません。これまでの病院経営では、こうしたことがないのが常識だったことは百も承知です。
がしかし、病院といえどもボランティアではないので、業務にかかる経費(特に人件費)と収入関係がどうなっているのか、把握できるようになっていて、どこに問題があるのかは明確にする必要はあるということです。
その常識を変える方法を見つけられない限り、経常利益0.1%といった危機的状況から脱出するのは難しいのです。
果たして、うちの病院では一人あたり時間収益はどのくらいとれれば経営が安定するのか?
その答えを知るには月間の収益と人時(人件費)がどのように使われているのか?を知る必要があります。
逆に、それを知ることなく、今のまま突き進めば、病院赤字幅は、さらに増えていくことでしょう…
まず、医療法人経営者は、人時収益高がどのくらいで、どこを目指すべきなのか?この点を明らかにし、院内共有していくことで、来期の数値を大きく変えることが出来るということです。
さあ、あなたの病院では、このまま、上がらぬ診療報酬が上がることを祈り続けますか?それとも、人時収益高目標を決め、その他大勢から大きく抜け出しますか?
著:伊藤稔