今週の収益改善の視点 649号:「チェーン企業が見落としがちな 本当の弱点とは何か?」
「売上は維持できてるんですが、利益が厳しくて・・・」とある企業の常務さんからのご相談です。
お話をお聞きすると、全体としては地域でドミナントを組んでいるので、大手チェーンはそんなに出てこない状況らしく、なんとかギリギリ利益も出ている。
ところが、お話を聞いていくうちにいろんなことが浮かび上がってきました。
例えば、水曜均一市や月初の市という日は、売上が2倍近くになるが、他の日は、お客さんが少なくて、売上げの大部分がこうした売り出しの日に集中しているということ。
毎月この数日間は、商品を山積みにして、人を張り付けて売上をとっているけれど、本当に商売を強くしていくための仕組みになっていない。
さらに問題だったのは、こうした企画を作ってきた社長ご本人は、この状態に対して、どこか「まあ、なんとかなる」と思っておられるようで、これを、心配した、息子の常務さんが、当社への相談にお見えになったということです。
自分の会社の弱点というのは、本当に自分ではわからないもので、売上が上がっていると、その数値が「大丈夫」の証に見えてくるということです。
「大丈夫だと思いたい」という心理が強く働き、弱点から眼をそらしてしまうのです。
そして、放置したことによって、傷口はさらに悪化していくのが大半です。
線状降水帯が発生し、堤防が決壊するのは必ず弱いところです。それは、通常時には全く気付かない僅かな穴から崩れ始めます。そして崩れ始めたら最後、一気に崩れ落ちます。
重要なことは、必ずどこかに「弱点」はあって、経営として、そこに気づこうとしてるか、目をそらそうとしているかの違いです。
決壊してからでは手遅れで、だからこそ、日ごろから、点検、補強の仕組みづくりが重要になり、これが、後になって大きな差となって表れるのです。
今、僅か数店から力をつけ大きくなっているチェーン企業は、こういった経営の危機に幾度も直面し、突破してきたところが、高収益企業になっています。
こうした企業に共通することは、「自社の弱点」を直視し、それを 補強し、強化してきたからこそ、大きくなっています。
人口減、人件費高騰が続く中、人口増時代のビジネスモデルが、通用しなくなっています。にもかかわらず「これはうちの強みだから・・・」といってやり続けたらどうなるか?
たしかに、得意なことだけをやってる方が、気分はいいし、成果も見えやすいものです。
売れる日に集中して人手をかけて売上をつくっている!しかし、それは全体の2割の日。
残り8割の売れない日は人件費オーバーの赤字状態。
このままいけば、堤防が崩れ決壊するのは時間の問題といえるでしょう。
恐ろしいのは、このまま走り続け、社内が疲弊していくことです。誰も止められないまま、体力は奪われ、気づいたときは、対処療法ばかりで、危険な状況の真っただ中。これが、現実です。
冒頭の、常務さんも まさに、この状況の入口に立っていたといえるでしょう。父である社長は、今はまだ動ける。体力もある。だから、問題が見えにくい。しかし、今のまま、延長上に5年後を想像したとき何が起きているか?
ご本人も、なんとなく心の中でもやもやしてたものがあって、話しているうちに何かが見え始め、ハッと気づかれ、目が輝き始めました。
重要なことは、ビジネスの全体像を俯瞰し、戦略的に手を打っていくことです。自社のビジネスドメインが何かを見つめ、弱点を着実に潰しながら強みをのばしていく。
3年後、5年後に、「あのとき手を打っておいてよかった」と言えるかどうか。それが問われているのです。
必死に守ってきたチェーン企業を、あなたの代で身売りするか?それとも仕組みをつくり蘇らせ、誇りを取り戻すか?
今、あなたは自社の弱点から目を逸らしていませんか? 売上という数字に安心して、足元の穴を放置したままにしていませんか?
著:伊藤稔
