「今週の収益改善の視点」653号:「なぜ、チェーンストアは採用を増やしても、セルフレジを入れても、利益が戻らないのか?」

653話

人件費ってどこまで上がるんでしょうか? 個別相談でお見えになった とある小規模チェーンの経営者さんからのご相談です。

お話をお聞きすると「この先、セルフレジや自動発注の導入を考えているが、人件費が上がり続けると、その効果がそれだけで消えてしまいそう」とのこと。

人が足りない。だから求人を増やす。それでも足りないから、セルフレジを入れる。いま多くのスーパーがやろうとしてる人手不足対策は、主にこの2つです。

10月公表のスーパーマーケット3団体の「2026年 年次統計調査」を見ると、人手不足対策として最も多かったのは「リクルート活動の強化」。生産性向上の取り組みでは、「セルフレジ・セルフ精算レジの導入」がトップにでています。

おっしゃる通り、どちらも必要な対策です。

スーパーマーケット企業の場合、大手も中小規模企業でも粗利率は26%前後でほとんど差がありません。しかし、営業利益率段階になると、大手が2.92%、小規模企業がマイナス0.43%と3ポイント以上の開きがあって、小規模チェーンの人件費効率が低いことが分かります。

果たして前出の企業が、採用強化とセルフレジを導入すればこの差は埋まるのでしょうか。

答えはノーです。

導入時は一時的に差は縮まるかもしれませんが、社員賃上げ毎年5%アップ、パート募集時給は毎年約60円上がっていて、採用強化に比例し人件費は増えます。

セルフレジも導入時はレジ人時は減っても、7割を占める品出し、荷受け、惣菜調理の売場作業は減りません。

単価上昇と効果範囲が少ないことをから、導入効果が消えたあとは再び悪化し、最悪の場合赤字になってしまうかもしれないということです。

多くのスーパーマーケットチェーン企業では、作業のない時間帯にも人がいて、反対に忙しい時間帯には人が足りない、という構造的な問題を抱えたままになっています。

つまり、そういった状況で人を増やせば、ムダな時間も一緒に増えてしまうという悩ましい問題があります。

実際にご支援させていただいている企業様でも かつてはそういった問題を抱えた状況からのスタートでした。

しかし、

「店内作業計画を見直したいのです。」というご相談いただき、

毎日の納品数と客数を一緒に計測し始め、その日に必要な作業量をだすことにとりかかりました。

作業のあるとこに人をつけ、逆に作業のない時間帯の人を徐々に減らすことで、人件費を減らす成功の糸口をつかむことが出来たのです。

一方で、開店前の品出しや夕方の惣菜など、売上につながる時間帯は新規採用で投入する。という見直しをしたことで、営業利益は2倍3倍へと大きく変わりました。

不思議なのは業界調査報告には、こうした「作業計画の見直し」ということについて書かれていません。

裏を返せば、ここに着眼し行動した会社は、業界水準に大きな差をつけることが出来るということです。

私が前職時代で業務改革に取り組んだ際、全社の人時売上は4年で170%伸び、営業利益は改革前の4.5倍になりました。

これは新しい機器や設備を入れたわけではなく、作業計画の見直しをしたことが土台です。

現在ご支援させていただいている企業も同じで、競合店の出店で売上が落ちた店や、24時間営業の競合に挟まれた店が、作業計画の見直しで人時売上を25〜30%上げ、営業利益を3〜4倍にしています。

今後も15〜64歳の労働人口は減り続けていくことから、多くの人がいないと回せない店舗運営は難しくなるといえるでしょう。

反対に、少ない人で回せる店をつくる競争であれば、もともと人が少ない中小規模企業の方が優位に戦うことが出来るということです。

さあ、貴社では、まだ、たくさんの人がいないと回らない店舗運営で赤字を出し続けますか?

それとも、少ない人員で効率的に運営できる店舗運営で、その他大勢から早く抜け出す道を選びますか?

著:伊藤稔

人時売上戦略を活かした店舗経営セミナー