今週の儲かる繁盛店の視点 第583話:「労働集約型企業で確実に利益アップ出来る企業と出来ない企業の違い」

「先生、頑張っているんですが、赤字ギリぎりなんです。とある病院の経営者からのご相談です」
聞くところによると、診療報酬点数の改定で実質収入が下がり、患者さんはいるのに、人手不足によって業務が滞り売上減少で赤字になってしまいそうとのこと。
お気持ちお察しいたします。
前職時代、店舗統括をやっていた時、毎日3千人のお客さんが来てくれるような店に対し、闇雲に人を削減を指示したことで、減収減益を招くといった苦しい時期がありました。
当時は、人時生産性の目標を提示しただけで、店長会議でも、具体的な話や指導はおこなっていませんでした。
いい意味では、店長に自由にやってもらっていたわけですが、悪く言えば現場に丸投げしていたわけです。
そんな状態でしたから、現場が疲弊するのは無理もなく、その苦しかった時のことを今でも鮮明に覚えています。
今なら、まず、現場で全ての作業項目を洗い出し、それに、どれぐらいかかり、どこの作業が滞っているのかを特定します。
同時に、作業項目を洗い出していく中で、非効率な作業も浮き彫りになるので、一表にして、主管部門に、年間このくらいの人件費が浮いてくるので止めるか簡素化して欲しいと要請を行い。
ようは、多忙な状況で「出来るとこまでやって・・・」「切りのいいとこまでやったら・・・」と言うのはダメで、違和感を感じたら一旦立ち止まって、原因を特定し、組織として、解決していく。流れをつくってということです。
病院経営に於いて、社会保障の診療報酬問題は避けて通れない問題です。そうは言っても、診療報酬がインフレに追いついていかず賃上げができないければ、現場には不満がたまっていくばかりです。
病院や介護事業は、1人のお客様の何度も来ていただくことによって、それが大きな利益をもたらしてくれる地域型ビジネスモデルです。
闇雲に人を減らせばすぐに、患者さんにも伝わり、患者数減に直結します。
なので、コストを増やさずに、何度も来ていただいてもきちんと対応できる仕組みが必須となります。そこで病院業務を忙しくさせている作業に注目して洗いだし、それを、経営プロジェクトとして取りまとめ確実に解決していく道筋を作っていくということです。
現場を忙しくさせている原因は何なのか?
――――ここから、調べてみることはできますか? とお聞きすると
「うーん?」と口こもられます
「病院経営は非営利が原則です。組織的には医師、看護師、管理栄養士、医療事務とそれぞれの役割が分かれてそこで完結されてます。
個別作業の内容を調べるといったことは今までやったことがないので、かなり抵抗感はあると思います。
しかし、そういったことで、患者さんを待たせしているのも事実だと思っています、抵抗感なくやる調べていく方法ってあるのでしょうか?」
―――今、病院にとって一番の問題ははなんですか?
「人件費増と人手不足です。それと 収入減です」
――――経営として人手不足がどこで起きているか?それを改善するために、「協力していただきたい」とお願いしてみる。ことはできますか?
「そういった目的でしたら、出来ると思います」
―――もう一つの問題、収入減の原因は何がありますか?
「診療報酬があがらない問題もありますが、患者数が減ってることだと思います。
ひょっとすると、人手が不足しているところに人を配置することで、それをカバーすることが出来るかもしれません。
特に、外来患者数は曜日によって差があるので、事前予測ができれば、それに対して医師や、看護師を配置でき、残業などの長時間労働も改善できるかもしれません。」
おっしゃる通り、経費で最も構成比の高い人件費が、どういう作業に使われているのかが分れば、半ば解決したのも同然といえます。
実際にやっていただくとわかるのですが、非効率業務に中には、過去に経営者が指示した有効手段となっていたことでも役目を終え形骸化してたり、費用対効果の良くないものが想像以上にあることに気づかされます。
経緯者としては耳の痛いものもあるのも事実ですが、こういった場で明らかにすることで、結果が変わっていくわけです。
そうは言っても
業務改善プロジェクトと聞くと、「抵抗勢力を納得させて・・・」とか「人員整理やリストラ…?」といった交渉で、人間関係がギクシャクすることを連想するものです。
確かに
一昔前は、そういったやり方が主流でした、今は、SNSの台頭で現場の問題が共有化されています。
むしろ現場からは、そういったことを経営に対し一刻も早くやってほしいという声が多いのが最近の特徴です。
かつて、売上が上がっていた時代はそれぞれも部門が経費予算をもっていたため部門の壁がありました。
今は、収入が上がらないため経費予算は削られ利益相反することもないので、壁はなくなりつつあります。
そういう意味では、すべての部署の従業員が何らかの悩みを抱えており、とにかくそれを早く解決して欲しいと望んでいるということです。
この流れを、月に一回のペース実施していくことで、一年後、別次元レベルで増収増益になっていたという企業が続々と増えています。
さあ、貴医院ではまだ、売上減と人件費増の実態を掴めぬまま赤字を続けますか?
それとも、問題を明らかにして、全ての部門の悩みを解決できる仕組みで、黒字安定化への一歩を踏み出しますか?
著:伊藤 稔