今週の儲かる繁盛店の視点 第218話:「圧倒的に支持されるチェーン経営とは」
「先生、売上が、上がればどうにでもなるのですが・・・・」
先日、個別相談にお見えになった、とある企業の社長からのご相談です。
こちらのチェーンは、これまで、配達やネットスーパーといったことを、積極的にやってこられ、売上を増やしてきました。しかし、少子高齢化の影響や、競合の出店があって、販促強化しても、売上は減る一方で、もうこれ以上のコスト削減は無理というギリギリ状態で、やってきたそうです。
―――必要なのは、「コストカット」ではなく「ローコスト」です。と申し上げさせていただきました。
釣った魚は全て食べてしまえば、それで終わりですが、それを餌にさらに大きな魚をとっていくことで収穫は増えます。エビで鯛を釣るように、少ない元手で、よりたくさんお金を稼ぐことは企業にはなくてはならないことです。ごく当たり前のことですが、チェーン経営ではそうはなっていないことが多いのです。
今や、人口は9年連続減少し、昨年はその人口減が過去最大でした。出生率が最低ということは、平たく言えばこの先20年、総人口減と賃金上昇が続くこととなります。
人口が増え続けていたときは、大金を投じ、販促を強化し、手数をかけてでも販売ルートを増やすといった、一時的でも、表面的な売上を上がることを優先してきました。
チェーンの社長のなかには、大量の人員を投入した販促戦術で、売上をつくることにこだわり、現状維持を目指す考え方が残っているのも事実です。
企業によってやり方は様々なので、そういった、やり方をとやかく言うつもりがありません。
しかし、客数が減り、コストが上がる中で、少ない人員で、生産性をあげていく仕組みづくりを、やろうとしない経営に、果たして、未来はあるのか?一人の経営者として、大きな疑問を感じるわけです。
国内の中堅チェーンにとっては、大手チェーンのように、金融事業やテナント収益事業を多く抱えているわけではありませんので、小売本業でどうやって人時生産性をあげていくかが課題となります。
ここで重要なのが、小売本業の儲けを示す営業利益率を、毎年最低3%以上稼ぎ出す仕組みが揃っているかどうか?ということです。
理由は簡単で、それが店舗改装費および成長戦略のための、必要運転資金となるからで、早期にこの3%を確保しておきたいところです。
これまでは、チェーン経営の中で、売上対比10%以上を占める、人件費を日々どのようにコントロールすればよいのかを把握するすべがなく、営業利益が1~2%という水準に留まっていました。
これからは、人時生産性を上げてくために、一人一人に無駄なく仕事が割り当てられているかが重要であり、今までの売上中心のやり方から180度変わっていくことになります。
「うちは、人が足りないから、無駄な仕事はしていない」という声が聞こえてきそうですが、
たとえば、今年は猛暑で、気温が高く、昼間の時間帯に買い物にくるお客様は少なく、朝と夕方に集中します。
そのため、朝の開店時の品ぞろえは重要で、ここで品切れが無ければ、開店時の売上は一気に上昇します。また夕方から夜の品ぞろえも品切れがないことが重要で、その時間帯で品切れが無ければ、夕方の売上利益は一気に上昇します。
実際に、追跡調査をしてみるとわかるのですが、朝夕の作業が集中する以外の時間帯は、レジを除き、ほとんど、人は必要なくなる状況がおきます。
「そんなこと わかっている」という声が聞こえそうですが。
―――では、それに対して人員計画がどうなっているか?わかる作業指示書はありますか?とお聞きすると、
皆さん、うっ!と言葉に詰ります。
昼間、作業の発生しないところに、ムダな人員がはりついていないか?ということをチェックする仕組みがあって、それに基づき、人件費コントロールが出来ているか?ということです。
こういう仕組みを持たずに、採用を続けると、
「2人欠員したから 2人補充してほしい」とか
「もともと3人でやっていたのに2人でやるのは無理がある」とか
「頭数はいても、土日休みの人ばかりで困っている」といった
不要なところに過剰に人が投入され、本来、必要なところの人が不足し、人件費は膨らみ。いつまでたっても「人が足りない」状態となるのです。
本来の業務内容を把握し、人の配置をみていかないことには、人が本当に少ないのか?多すぎるのかは把握することはできないのです。
繰り返しますが、人件費というのは、売上の10%以上を占めるチェーン経営で最も高い経費なわけです。
ですから、経営が何もしなければ、一時間の時間給1000円×貴社の全従業員人数分のコストが、チャリン、チャリンといって音をたてて、タクシーメーターのように上がっていき、それが、販管費の高止まりを引き起こすことになります。
販管費が高いというは、ハイコストオペレーションであり、ハイリスクです。それは、本来、かけるべきでところに、コストをかけることができない悪循環を引き越します。もし、ここでローコストオペレーションに一気に転換していくことが出来れば、良いサービスであったり、同じ商品であればより安く提供できたり、お待たせしないレジ体制、といった、店舗コンディション力をあげることも実現可能となります。
国内の自動車産業や、製造業や、メーカーは、こうしたオペレーションコストの引き下げを徹底し、商品付加価値に転嫁しているからこそ、世界舞台で通用するのです。仮に、仮にですが、貴社が、アメリアや中国やアジアに出店した場合、各国のチェーンと戦うことが出来るかどうか?と自問してみてください。
「うちは ドミナントだし 海外出店などしないし・・・・」
といった悠長な話を、している時ではありません。
むしろ、その逆も、大いに考えられるからです。いま、全米で急成長しているのは、独のアルディとリドルです。ドイツのローコストオペレーションのハードディスカウンターです。毎年100店舗ペースで出店していて、全米で最も注目されているチェーンです。そんなチェーンが、地方のあなたの店の付近に乗り込んで来たら・・・・十分考えることが出来るわけです。
なんでもそうですが、業種にかかわらず、高コスト体質は、やがて淘汰されます。そのためには、今から、ローコストオペレーションにむけた準備に動かなくてはなりません。
ローコストオペレーションは一夜にしてできるものではありません、ノウハウを知りそれを動かすまでに時間がかかるからです。
お客様に圧倒的に支持されるためには、社内の全てのムダを無くし、お客様に集中できる仕組みをもつことです。
作業指示書もLSPもその一端にすぎません。すでにスタートしている企業に迷いはありません。社長の腰が引けていれば チャンスは逃げていきます。やるときめ、前進あるのみ。これこそが、成長にむけ安定して進んでいる企業の輝く姿と言えるでしょう。
さあ、貴社では、本腰をいれて、ローコストオペレーションに取組む決意されましたでしょうか?
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。