
「先生、人件費の削減をしても、追いついかないんです」とあるチェーンの経営者さんからのご相談です。
お話をお聞きすると、もう人件費削減に限界がきていて、別の方法を教えて欲しいとのこと。
3月~8月のチェーン小売り大手、準大手の中間決算を見ても、物価が高騰で人件費増をカバーできず、減益となる企業が続出しています。
語弊を恐れず申し上げれば、こうした結果になるのは人件費削減だけしかやってこなかったことに原因があります。
伊藤は常日頃、人件費対策は増収策とセットで実行するもの。と口を酸っぱくして申し上げておりますが、実態はそうなっていないのが国内小売りチェーン業界の悲しい現実となっているということです。
その多くが、「残業をさせない、採用を止める、契約変更をする」といった人件費削減だけで、効果的な増収策を実施してこなかったことに起因しています。
そのため、それ以上削るものがなくなったらそこで終わり。これでは、企業として成り立たたない。という訳です。
そうは言っても、ポイント倍増もこれ以上増やせないし、チラシ商品もこれ以上安くはできない。といった声が聞こえてきそうですが、
――――今期の棚割り変更は何回実施されましたか?とお聞きすると
「えっと・・・」と言葉に詰まります
一般的に、1万アイテムあるとされる食品スーパーでは、新商品一品の差替えも含めると、年間約800回の品揃え変更が行われます。
ここ数年は、価格変更や規格変更が多く、そこまで含めると その回数は1.5倍にも昇り棚割り管理にかかる人時は毎年増えています。
アイテムの新旧商品を入れかえ、プライスカードを差替え、残品の値下げ、商品移動をするとなると時間は必ずかかります。
まして、棚を取り外したり、棚をまたぐ差し替えになると、1時間では終わらないこともあったりまします。
経営からみれば、それは店長や担当者ごとに、うまくやってるはず、と思われがちですが、
果たしてそれらにかかる必要な時間は計画に組み込まれているか?となると、あいまいな部分も多くそうなっていないのが実態です。
現実問題として、棚割り変更が一週間遅れると、売上損失になるだけではありません。
カット商品の棚に、売れない商品が並んでしまうことから、問題発見が遅れ、店長の気づかないところで利益棄損が続き、気づけば減益に・・・というのは良くある話です。
こうして何もしない店舗と対策を実行した店舗を比較してみると、売上げ対比1.5%~1.0%もの直接利益が変わってくることが見えてきます。
現状、年商10億の赤字ギリギリの店でも、ちゃんとやれば1500万以上の増益が見込め、利益安定へと転換することは十分可能なのです。
言わずもがな、無駄な人件費削減し利益計上するのでなく、その一部をお金を生むことに投資することで、はじめて何倍もの利益にを手にすることが出来るという訳です。
「それが出来ないから困ってる・・・」 という声も聞こえてきそうですが
人は、日々やり慣れたものを優先する生き物、いくら口で言ってもルーティン業務が先になり、こうした業務は後回しになります。
これが、棚割り変更がすみやかに行われない大きな要因です。
大事なことは、棚割り変更がなぜ大事なのか?これが店舗に伝わらないと、店長はそれに必要な人時を採用しないからです。
人時作業指示書を使っている企業では、棚割り変更業務は重要な位置づけとなっていて、人を採用してでも実施するので、決してルーティンの後回しにされるというようなことは起こりません。
なぜなら、不要な人時を削減すると同時に、棚割り変更にかかる人時を毎年アップデートし新規採用を必ず実施しているからです。
さらに、人時作業指示書で、誰がやっても同じようにすることで、確実に実施してもらえる体制が出来上がっているからです。
さあ、貴社では、人件費削減だけやればいいと勘違いし、また、同じ失敗を繰り返しますか?それとも、利益が増える業務を組み込んだ体制を作って、毎年増益を実現しますか?
著:伊藤稔



