今週の収益改善の視点 641号:「なぜ、患者を増やせと言うのを止めたのか?——ある急性期病院経営者のホンネとは?」
導入以来、一度も下がったことがない消費税を、政府は食料品の消費税を8%から1%に引き下げる方針を閣議決定しました。
「絶対に下がらない」と誰もが思っていたものが下がる。
この事実に、「動かせないはずのものは、案外動かせるのかもしれない」——そう考えを持たれた方も多いのではないでしょうか?
もちろん「税率を動かせば、それだけで良くなる」わけではありません。
それでも、うまくいくかは、やってみなければ分からない。「タブーだから」で思考停止せず、疑ってみる。この空気の変化こそが、今までにないことといえます。
「患者数を増やせ!とは職員に言うのはやめたんです」セミナーにお見えになった、理事長さんからのご相談です
お話をお聞きすると。これまでは、とにかく外来や、紹介患者に対応し、病床稼働率を上げる。それが病院経営のセオリーだと思っていたそうです。
ところが、2026年の改定を受け、方向変換されたそうです。
なぜなら、評価されるのは「何人診たか」ではなく、「どれだけの実績を、どれだけの人数で積み上げたか」ということになったからです。
おっしゃる通り、救急搬送件数、手術件数、在宅復帰率といった患者数の多さより、人を増やさないで、どうするか?という状態になってきていて、病院としての生産性が求められています。
しかし、研修やワークショップをやっても、一過性に終わってしまうし、改善のために設置した委員会も成果が見えにくいままの状態。
一刻も早く、ここから抜け出さなくてはならず、どうしたらいいのか教えて欲しいとのこと。
患者数が増えないなかで、国が示す地域医療構想は、コストのかかる急性期病院は、効率の高い病院に絞り込み、そこに人・金・資源を集中する流れで進んでいます。
インフレで物価は上がり続けているのに、職員の給料をこれ以上簡単には上げられない。かといって、辞められては困ります。この板挟みに、多くの病院経営者は頭を抱えておられます。
そういう状況ですから・・・
「あなたの病院の一人ひとり生産性をどう上げるか」について、いまから着手し、今期中に結果を出すことさえ出来れば、その他の病院と一線を画し、生き残る切符を手にすることが出来るということです。
ご支援させていただいてる地方のある急性期病院では、「院内の業務量を改善するため、業務を見える化」に数年前から着手しています。
実は、こちらの病院も取り組まれる前は、各個人に任せたやり方で、長年やってきたのですが、ここ数年人が次々辞めていくといったことが起きていました。
そのため、人が替わるたびに業務が遅延したり、逆に早くおわって手持ちぶさたになったりということも散見され、仕事の出来る人とやらない人の間で、ぎくしゃくし人間関係になりうまくいっていなかったのです。
経営が、個人面談をしても、解決の糸口が見つからず、弊社にご相談にお見えになりました。
そこで、問題になっていた部署を対象に、業務の流れを書き出してもらい、そこから、どうしたいのか?について、話し合う場を月に一回設けることにしたのです。
まずは、一週間分の業務内容をもとに、そこからスケジュールを作り直そうとすると、実際問題人が足りていなかったため、人を増やしつづけていたことが分かりました。
本来なら十分足りるはずの人員がいるのに、なぜ?
メンバーの方と一緒に調べていくと、通常の医療業務以外に、院内○○委員会というのが月40個あることがわかり、その時間が全体の3割を占めていることが分かったのです。
そこで、乱立していた委員会を、中身の重複するものは統廃合し、委員会の新設は承認制にすることにしたのです。
委員会の議事録はAI化し、病院経営の実績も、医局のモニターに流すなどし、集まらなくても情報共有できるようにしたのです。
結果的に、委員会の数を2割減らし、想定以上の500人時の削減することにしました。
また、業務流れを可視化し、「誰が何をするのか」が明確にしました。業務の偏りや遅延原因が分かるようになったことで、人間関係が改善され、結果、患者満足度の向上にもつながったのです。
人が辞めていく問題を重く受け止め、業務内容を調べ始めたわけですが、それが、少ない人員で病院を運営していくきっかけになったということです。
振り返って、あなたの病院ではどうでしょうか?
国家資格をもった個人に任せたやり方は、働き手がたくさんいた時代は通用しました。しかし、今は、患者は減り、働き手が少ないため、各自が行う業務は爆発的に増えています。
こうした状況で、資格保持者を活かすには、現場状況を経営が把握し、サポートしていかないとうまくいきません。
個人に任せるやり方をこれまでどおり「動かせないもの」として考えるか?
「動かせるものかもれない」と考え、経営が関わっていくことが出来るかどうかで、生産性改善の結果は別次元のものにすることができるということです。
そうした 病院経営者を全面サポートするのが 私たちの役割です。
著:伊藤 稔