今週の収益改善の視点 635号:「なぜ、病院改革は形より流れを見直すことで、実績成果は変わるのか?」
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診療報酬改定から間もなく1か月が過ぎますが、この頃になると、悩ましい問題がでてきます。
例えば、“返戻”もそのひとつです。
返戻とは、診療報酬改定に対し、現場の記録が追いつかず“流れが一瞬ズレる”ことです。
入ってくるはずのお金が入ってこなかったり、その原因確認・再請求といった作業が発生するため“見えないコスト”がかかり収益に影響します
先日も、このムダを無くすにはどうしたらいいのか悩まれ、ある総合病院の理事長がセミナーお見えになりました。
一般的な企業の場合、日常事象から気づき、改善行動を指示し成功される社長はたくさんおられます。
例えば
トヨタは繰り返し起こる小さな異常から、作業の流れの重要性に気づきカイゼンを生み出しました。
マクドナルドは毎日の提供遅れから、厨房の流れを再設計し大きく成長しました。
しかし、病院経営の場合は大きく異なります。なぜなら、医療と経営という二つの歯車を回していかなくてはならないことから、なかなか経営として現場事象に対し目が届きにくいという問題があるからです。
そうした中、この先2040問題を見据え、そこに気づかれた先の理事長さんの経営感覚はほんとうに鋭いといえます。
2040年にくる人口構造の変化は、今日の病院経営の根本から揺さぶります。
85歳以上人口は2040年にピークを迎え、救急搬送は増え、慢性疾患は複合化し、業務量は現在の1.5倍になるとも言われています。
一方で、生産年齢人口は減少し、医療従事者の確保はさらに難しくなります。病院改革は「やるかどうか」ではなく、やらなければ病院が回らなくなるということです。
医師・看護師・コメディカルの業務のムダや滞りはそのまま経営リスクに直結することから人が足りなくなる前に、業務の流れを良くしておかなくては致命的になるということです。
財政も限界に近づき、社会保障費はGDPの24%前後へになります。
急性期の統合、病床機能分化、地域連携の強化──これらは政策の方向性ではなく、病院が生き残るための必須条件といえます。
こういってしまうと、身も蓋もないのですが、見方を変えると、2040までは、正しく準備された病院にとっては、圧倒的な追い風が吹く年になるということです。
患者は増え、医療需要は増え、地域は病院を必要とし続けます。在宅医療や地域連携は拡大し、電子カルテ情報共有サービスの標準化によって、病院間の連携はこれまでよりもはるかに容易になります。
つまり、2040年は「正しく準備をした病院の収益が最大化する年」でもあるのです。
ただし、勝てるのは“今から準備をした病院だけ”です。
なぜなら、人の育成、仕組み、組織改革で成果を手にするためには、5年~10年と長い時間を要するのものだからです。
病床をどうするか。急性期をどれだけ残すか。回復期をどれだけ増やすか。地域包括をどうするか。こうした病院の形を見直すことは確かに重要です。
しかしながら、どんなに形を変えても、それを活かす運営がダメなら何も変えることはできません。
具体的には、
患者が滞りなく流れるようになったか?医師・看護師が本来業務に集中できる環境はあるか?外来・病棟・地域連携が一本の線でつながるようになったか?
こうした「病院運営の流れの改革」こそが、2040年に向けた成否を決めるということです。
すでに、病床再編を成功させた病院は例外なく、形より先に運営の流れを整えています。
これに着手したA病院では、業務のロスを見つけて消し、必要な人の時間を下げ、患者の滞在日数を短くし、紹介を増やしたことで、経営を安定させています。
流れが整えば、病床の役割は自然に定まり、地域から選ばれる病院になるということです。
もし、流れが整わないまま形を変えると、どれだけ立派な計画を作っても現場は多忙化し、「結局、何も変わらない」という結果になります。
これは多くの病院が経験してきた現実です。
だからこそ、2040年に向けて病院のポジショニングを再定義するなら、最初に着手すべきは業務改善──つまり、業務フローの見直しになるということです。
さあ、あなたの病院はまだ、形を追い求めますか?それとも実績が変わる病院改革で業務フローを見直しますか?
著:伊藤稔