今週の収益改善の視点 643号:「チェーンストアが減益から抜け出すために、経営としてやっておくべきこととは?」
先日も、「売上が前年割れになっている。この先どう進めたらいいのか、教えていただきたい」と、あるスーパーの社長さんからご相談です。
お話をお聞きすると、値上げの波に乗り、まだ売上は伸ばせると思っていたところ、前年割れが続いており早めに手を打ちたい、どうすればいいのか教えてほしいとのこと。
売上は良い時もあれば、良くない時もあります。しかし、景気や値上げといった他の依存度は下げ、自社でコントロールできるようにしたいものです。
資金的に余裕があれば、新しい取り組みをして、次につなげていくといった良い流れをつくることもできるでしょうが、そういう企業は、世の中には存在しません。
現実的には、計画を立て、金融機関や株主に説明し、初年度は厳しくても翌年から回復するといった戦略を作ることしかないわけです。
そうはいっても、「どこから手をつけるべきか」「何を変えれば数字が動くのか」、この問いが常についてまわり、こうしたジレンマは、経営者にしかわからないものです。
多くの企業がこうした状況で立ち止まってしまうのは、やる気不足でも、人材不足でもなく、もっと根本的なところにあります。
それは、“変えられる部分と変えられない部分を区別しないまま、なんとなく改革を始めようとしていること”です。
経営者は、企業のすべてを変えられるように見えますが、実際には、企業には必ず「変えられない領域」が存在します。
例えば、株主構造、システム仕様、グループ方針、地域特性、歴史的な制約等、こうした外側の条件は、経営者の意思では動かすことはできません。
一方、本部の役割、店の業務負担、標準化の流れ、情報の伝達、属人的な仕事、会議の構造・・・こうした内側の条件は、社長の意思で変えることができます。
これを、ごちゃ混ぜにすると、改革は必ず迷走します。
なぜなら、変えられない部分に力を注ぎ、変えられる部分も変えることが出来ないままになってしまうからです。
その結果、コストは重くなり、収益悪化。「なぜ変わらないのか」がわからないまま、時間だけが過ぎていきます。
こうした局面で、最初にすべきことは、“変えられる部分と変えられない部分を明確に線引きすること”です。
この線引きは、地図でいえば、どこに道があり、どこに道がないのか、どこを進めば成果につながり、どこを進めば疲弊につながるのかを示すものです。
その地図があるかないかで、人の動きは驚くほど変わってくるからです。
人の時間は、会社の中で最も高価な資源です。その資源をどこに使えば利益を増やすことができるのかを決めるのが、経営の役割です。
もし変えられない部分に時間をとられれば、社内疲弊に繋がり、数字の停滞となり、やがて「生産性が低い会社」というレッテルを貼られます。
逆に、変えられる部分に時間を集中させれば、その時間は必ず成果につながる。
本部では有効な戦略が作れるようになり、店舗の業務量は減り、動きが早くなり、数字が上昇する。これこそが生産性向上の本質だからです。
生産性を上げるためには、“どこに時間を使うべきかを見極めること”。そのために必要なのが、変えられる部分と変えられない部分の線引きになるということです。
経営者として、すべてを変えようとして身動きできなくなることを避けるためにも、変えられない部分は前提として受け入れる。
そして、変えられる部分だけを、確実に変える。
この切り分けができるかどうかが、明暗を分けると言っても過言ではないということです。
さあ、貴社ではまだ、全てを変えようとして、失敗を繰り返しますか?
それとも、変えられない部分を受け入れ、変えるべき部分に集中することで、一年後の結果を変え、二年目以降大きく飛躍できる道を選びますか?
著:伊藤 稔