今週の儲かる繁盛店の視点 第579話:「なぜ、業務改革プロジェクトのメンバー選びが重要なのか?人選を間違えた企業のいく末は?」

備蓄米が大量放出されたことで、お米の価格高騰の理由がハッキリとしてきました。
当初お米担当大臣をメディアは叩いていましたが、その素早い行動力で確実に風向きが変わってきています。
政府は2018年に減反政策は廃止したものの、コメを作らないことに補助金を出し続けたことで、コメの生産量が限界まで下がりコメ不足問題は起こりました。
しかし、それによって、本来、年間どのくらいコメが必要なのかハッキリしたため、それほど備蓄米をもたなくいていいことも見えてきました。
そして、毎年100万トンを備蓄する倉庫代や、不足を見越した卸業者が複雑にからんだ流通コストが、価格を吊り上げる要因になっていたこともわかりました。
お米担当大臣がこういった活動をしなかったら、絶対に表に出てこなかった値上がり要因の話が次々と浮彫にされたわけで、今後どうなるかおおきな見どころと言えます。
企業の業務改革もこれに似ていて、本質的な議論をすることを避けて通ろうとする人が必ずいて、その人たちしか知ることができない情報があって、業務改革が先送りされることは多々あります。
私も、かれこれ企業の業革プロジェクトは20年以上かかわらせていただいておりますが、
チェーン企業の一番の問題は、サービス残業です。「うちはとっくにその問題は解決してます」とおっしゃられる社長さんもいらっしゃいます。
ーーーー本当のところはどうなんでしょうか?調べたことありますか?とお聞きすると
「えっ!」と言葉につまったりします。
実際にお手伝いしている企業でも、サービス残業問題が発生しないように、最初にタイムカードの打刻のしかたから、ご指導させていただいております。
ところが、2年くらいたって、「実は隠れてサービス残業をやってる人がいる」といったことが、調べていくとポロポロ出てきて、社長が真っ青になった。ということがありました。
「あれだけ、言ったのに。まだ、出てくるとは…」とがっくりと肩を落とされた社長の姿を今でもはっきり覚えています。
そして、過去一年間遡って、まあまあの金額の残業未払い分を払うという決断をされました。社長いわく「本当に情けなかったし、残念だった。二度と起こさせない。自分へのペナルティー」と意気消沈しておられていました。
しかし、この残業未払い事件を、きっかけに、会社として本気でサービス残業撲滅に取り組くむことが出来た。と後にお話しされています。
これまではこういった問題がでると、なんとか穏便にすませようようと、運営部や人事部は都度、現場への注意にとどめ、社長への報告はせずに処理してきました。
それを一喝し、「そうやってうやむやにしようとするのが、うちのだめなとこなんだ!」と激怒されたそうです。
きっかけは、業革プロジェクトの必須項目となっている、タイムカードの打刻率が1年以上改善されないので、どうもおかしい?といったことでした。そこで、プロジェクト事務局が集中的に入って、数カ月にわたり調査をかけていったのです。
すると、鮮魚のチーフが早朝出社し、タイムカードを打たずに作業をしているのを店長が見て見ぬふりをしていたり、レジのチーフが店長不在の日にかくれて出勤しタイムカードを打たずにレジの出勤シフト作成をしていたり、
惣菜のチーフがタイムカードを打刻した後、デスクワークで提出書類を作成していたり、といったことが次々見えてきたのです。
店長自身も「こういったことは入社した時からあたりまえ」と思っていたようで、特に気に留めようとにしなかったとのこと。
そこで、働いた分はすべて残業として認めるのできちんとつけるようにと、改めて指示をだされたそうです。
いわずもがな、100%残業をきちんとつけるとなると人件費は増えます。
今月の人件費が1.3倍なのか1.5倍になるか?どこまで、増えるか全く予想がつかないなか、出たら出たでしょうがないと覚悟を決めたのです。
しかし、翌月P/Lを確認すると、人件費はさがっていました。さらに、その月を境に徐々に下がるようになったのです。
理由は、そんなに残業していなかった。からです。
「遅くとも30分前には出社しないとダメとその昔教わった」とか、「仕事がおわらなかったら先にタイムカードを打つ」といったことはかつての先輩のやり方を真似てやってきたようでしたが、
ちょうどそのころから、人時作業指示書を使い始めたことで、個々の仕事が見えるようになったのが不幸中の幸いでした。
ここまでやればよいということが明確になっていたため、作業が時間内に終わるようになっていたからです
つまり、プロジェクトが成功するしないは、こうした仕組みと忠実に実態を調べてくれる人選が必須で、これが極めて重要になるということです。
なので、セミナーに参加された社長さんは、このメンバー選びはかならず時間を掛け相談されます。
やり易いメンバーで固めたプロジェクトは、後にこういった問題に遭遇し高くつくということです。
さあ、貴社では、まだ、かわいいイエスマンで業務改革を進めようとしますか?それとも、反骨精神をもったメンバーを集め効果の高いプロジェクトを実践していきますか?
著:伊藤 稔