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今週の儲かる繁盛店の視点 第603話:「その業務、患者さんのためになっていますか?“患者のため”を問い直す勇気とは?」

「クレジットカードで支払いたいだけなのに、なぜこんなに待たされるのか!」
外来の会計窓口で、男性の患者さんが声を荒げ、それに職員対応する場面を見て、おもわず言葉を失ったんです。

先日セミナーに参加された ある病院の理事長さまからのご相談です

お話をお聞きすると、会計システムを自動化するのに、これによって何が改善されるのか報告するよう指示をだされていたそうです。
ところが、新機種に入れ替えるだけで何も変わってこない提案書を見て、違和感を持たれたのこと。

そこで、ある日の午前中、会計窓口の裏に立っていると、冒頭の出来事に遭遇されたそうです。
よく見れば、カード決済端末は窓口で人の手による作業に限られ、精算機は現金専用。クレジット処理に時間がかかるのは、職員の怠慢ではなく、病院の構造そのものだったからです。

職員の頭をさげ続ける姿を見ながら、「これは誰のための仕組みなのか」と自責の念に駆られたそうです。

これまで「患者のために」と言い続け様々な投資をしてきたものの、現場は疲弊し、患者が怒る状態になっていたのです。

このままでは、機器の入れ替えをしていっても何も変わらない。

そんな思いで、セミナーに参加されたとのこと

実は、このお話、セミナーの申し込み時に、こういったことについて、相談したいと丁寧なご連絡をいただいたのがきっかけでした。

――――それにしても、自動精算機に切り替えた際、なぜ、クレジット端末を入れなかったのでしょうか?

え?言葉につまり。

それが、提案書に入っていて端末は入ったことになっていました。しかし、自動精算機ではなく、受付で個々に対応するためのクレジット端末が1台しか入っていなかったのです。

現金患者は、自動精算機で払ってすぐに帰れるのに、クレジットカードの患者は受付の前に、長蛇の列ができて中々帰れない。

これは、コロナ後からずっと続いていたようで、今回、理事長が現場を押さえて初めて顕在化した問題の一つだったのです。

今回のようなことがいっぱいあるのではないか?と思い相談に見えたそうです。

似た問題では、総合病院として毎年インフルエンザ予防接種問題があります。

インフルエンザ予防接種は、本来は地域診療所が担うべき業務です。

ところが、毎年やってきたから・・・ということで今も多くの急性期病院で行われています。

予防接種はほとんど儲けがなく赤字業務、これによって、急性期病院が提供すべき高度医療業務は圧迫され、医師や看護師の労働時間が増えることで、やればやるほど利益は悪化します。

でもやめてしまうと、「患者さんが困る」そのためやめられない。という声が聞こえてきます。

実際に、そういったアンケートを取ったことがありますか?とお聞きすると

「えっ?」と言葉に詰まります

――――“予防接種をやってるとこならどこでもいいということで来ている”のではないでしょうか?と申し上げると

理事長さんが、斜め上を見つめながら深く頷かれてたのがとても印象的でした。

各医療法人としての、それぞれのお考えがあると思います。

昔のように、多くの患者さんがきて、対応する医師もいて、やってきた時代は終わりました。

今は、少ない患者さんをそれぞれの役割をもった医療機関が効率よく対応していかなくてはならない時代になったということです。

その証拠に、8割の総合病院が赤字で、それは患者にとっても、職員にとっても、地域にとっての三方よしでなければ生き残っていくことが難しいということを意味します。

さあ、あなたの急性期病院では、まだ、こうした問題をそのままにして、機器の入れ替え、システム投資をやり続けますか?

それとも、病院の中に潜む根本的な問題を解決し三方よしを実現しますか?

次に、急性期病院で新たな一歩を踏み出し、業績改善結果を手にするのはあなたの番です。

著:伊藤稔