今週の儲かる繁盛店の視点 607号「なぜ、業務フローのない病院は人件費コントロールが出来ないのか?」
先生 業務フローで人件費は下がっていくのでしょうか?
とある病院の理事長さんからのご相談です。
お話をお聞きすると、医師や看護師はフルタイムなのカットできるのは残業代ぐらい、その先どのようにすればいいのか教えてほしいとのこと。
――――業務フローは残業カットのためのものではありませんよ。はっきり申し上げました
業務フローとは、一日の業務の流れを図表にしたものです。
誰が何をやるかを計画し、実績との差異を改善させていくことが目的です。
具体的には、患者動線にもとづいて、患者さんをお待たせしている状況を確認したり、どこかで業務が滞っていて、人はいるのに無作業になっている時間はないかを、といった情報を集め解決していくことが目的です。
例えば、循環器内科や脳外科といったとこは、外来患者数が多いので、昼休憩がまともにとれなかったり、診察時間を過ぎても終わらない科もあります。
一方で、過去人口増に合わせ、診療科を増やしてきたものの、患者数が減ってどうしたらいいのか?と悩んでいる科もあります。
最初は 業務フローを使い、どこで、人件費オーバーや人手不足がおきているのかを発見していくことになります。だからといって、やめてしまうのではなく、それらを取り巻く環境もヒアリングで集めていきます。
総合病院は患者を断れない、クレーム対応を想定しなくては・・・様々な要因で人を多く抱えざるを得ない状況あり、人件費をコントロールしたくても人件費超過状態があるからです。
こう言いますと
「人件費の月次中間チェックはしてはいるのですが・・・」という声が聞こえてきそうですが?
人件費を予算内に収めるのに、月に一回ぐらいの中間チェックをして収まるくらいなら、人件費高騰に苦しむ企業や病院はありません。
それほど、人件費コントロールは難しいのです
まして、一事業所で、数百から数千人が働くのであれば、業務フローで日々確認していかなくては、とうてい予算収束は無理です。
実際にやってみるとわかるのですが、正しく業務量を計測し、そこに人を割り当ててみると、2割から3割と人時が多くなります。
なぜなら、人を全ての業務に細かく配置するには限界があるため、どうしてもその分余計に人時が発生してしまうからです。
人手不足や人件費高騰を嘆く前に、具体的にどの時間に、何人時必要なのか?明確にすることが先ということです。
この問題が特定できれば、病院経営の問題はほとんど解決することできます。
一人辞めたから一人入れるといった、昔ながらのやり方は、現場に負担がかかるだけでなく、採用コストはとても高くつきます。
業務フローをきちんとつくって運用できていれば、タイムカードの未打刻が多い。残業が多い。年次有給休暇未取得が多い。
等々のことは事前に察知できますし。
こうしたことができるだけで、採用コストは大きく変わってきます。
さらに、業務フローを使った、非効率業務のヒアリングによって、業務量そのものを減らしていくという次の段階に進むことができるようになります。
こういった機会を経営側が積極的に取り組むことで、形骸化した業務や、ダブりや設備の老朽化ということが引き出せます。
実際にこういったことを実施されてる急性期病院では、退職率は大きく改善されてます。それだけではありません。人件費も毎年下がっているものの、賃上げもしっかり実施できているからです。
さあ、あなたの病院でも、業務フローを作りどこに、問題があるのかをあぶりだしてみませんか?
次に業務フローで、急性期病院の業績改善を手にするのは あなたの番です
著:伊藤稔