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今週の儲かる繁盛店の視点 第296話:「人時システムにいくら力をいれても 生産性は上がりません。もっとまずいことに、企業成長しません。今 御社に必要なのは…」

「先生、人時売上を出すようにしたら、人時を増やすはめになってしまって・・・」セミナーに参加された、あるチェーンの社長からのご相談です。

聞くところによると、ここ数年かけて、全店で人時売上をだすようにしたところ、不足してると、あちこちの店から声が上がってきてるとのこと。

ありのままを出すだけで、それが、なにかの改善に繋がるのでしょうか?とお聞きすると、

「えっ?」とキョトンとされています。

理由は簡単で、基本ができていないまま、何か新たなことをやろうとしても、足元がぐらつきうまくいかないからです。

例えば、家を建てるとき、すべてを支える土台の基礎工事をします。土台をしっかりさせることで、傾かず丈夫で長持ちするようになるからです。忘れてならないのは、土台を支える地盤こそが重要ということです。

そのため、事前に地盤調査を行い、軟弱な地盤の場合、地盤の固いところまで杭を打ちこみ、補強をする必要があります。
こうした対策をすることによって、基礎はゆるぎのない”家の土台”となります。

チェーン経営も同じで、地盤部分となる、業務の棚卸や非効率業務について調査を行い、そこでは曖昧な非効率業務を、改善しながら補強していきます。
その上に、人時実績表であったり作業指示書といった土台づくりをしていくことで、安定的に使えるものになります。

この地盤がしっかりできていませんと、人手不足の部門はそれを盾にとって「あれが出来ない」「人が足りない」といったことが起き、反対に、人が余ってる部門は、益々なにもやらなくなっていきます。

経営としては、全ての店でどんな時も、テキパキと仕事を済ませて早く終わりにしてもらいたいとこですが、人は、忙しい時は、急いで一生懸命働いてくれますが、暇な時は、ゆっくりマイペースでやろうとするものです。
そのやり方を個人任せている限り、思うようにはならないのです。

確かに業務を洗い出し、設定していくと、これまでやりたくても、出来てなかった業務までが顕在化してきます。
問題は、そういった業務が利益を生むことに結びついているかどうかであり、経営はそれを精査し、儲からないものは「やめていく」決断をしていくということです。

理由は簡単で、生産性に取組み始めると暇になるので、逆にこういった業務を行うように指示がでて業務量が増えていくからです。

例えば、毎日午後になると「3時の掃除タイムです、従業員のみなさんは、売場の掃除をしてください」といった店内放送を聞いたことはありませんか? モップを片手にしたパートさんが、厨房から売場に出て数分間掃除をしているあれです。

少し考えてみればわかることですが、平日15時頃の売場は乱れてないし、床も汚れていないのに、なぜ「一斉に清掃タイム」自体が必要なのかどうか?経営として予め判断していかなくてはならないということです。

批判を恐れず申しあるとすれば、この時間に、掃除用具をもって「一斉掃除をする」ことが必要なのか?ということです

「この時間は、お客さんも少なくて、夕方のピーク前の重要な時間だからその間に売場体制を点検する。といった意味だ」という声が聞こえてきそうですが、

――――その時間帯 一人一人が何をされているか?ご存知ですか?とお聞きすると、

皆さん「うっ!」と言葉に詰ります

実際に調べてみると、わかるのですが「掃除をしなくてはいけないのはわかっているが、やってる人は殆どいない」という事実です。

かつて人が確保できた時、この時間帯は、きっと手が空くだろうから予め仕事を作っておかないと、「暇そうな店」とか「人の多い店」と言われかねないことから、作られた名残り業務のひとつといえます。

今は、手が空くのであれば、他の売場を応援するとか、契約時間を短くして早く帰れるようにすればいい訳ですが、人が多かった時代の名残が社内にはたくさんあって、それを「やめさせていく」戦略と仕組みがない事から、どこの企業も、安くない人件費を払い続けている。ということです。

この「お掃除タイム」のコストを算出してみると、仮に毎日15分間4人の人がそれに関わっていたとすると1人時/日です。年間で365時間これに費やしていることになります。
50店舗あるチェーンなら18250人時となり、時給千円とすると、毎年2千万近いお金がこれにかかっていることになります。

企業それぞれのお考えがあるので、それを どうこう言うつもりはありませんが、問題は、形骸化した作業が放置され、それが、作業指示書に記載され業務が膨れていくコトにあります。

前出の企業のように、そんなに仕事がないはずなのに、必要人時だけ雨後のタケノコのように増え続けたのはこのためです。

こちらの企業の場合は、こうして社長が違和感に気づきご相談にお見えになったからよかったのですが、これに違和感をもつのは「お客様」であるということです。

そもそも、売場が綺麗なのに、一斉に従業員が売場に出てお掃除タイム? しかも誰も出てこない? この企業は「言ってることと やってることが違う」なんか古いルールに捉われ、無駄なことをやりつづけてるのでは?と容易に想像できるということです。

一方で、こういったことを踏まえ、業務改革が進んでいるチェーンでは、指示は、全て作業指示書から移行された人時割レイバースケジュールから出されます。

店内放送によって指示をだすのは 緊急のときだけであって、お客様に関係ない連絡事項はすべて人時割レイバースケジュールを通して行われます。

「レジ応援はどうするのか?」という声が聞こえてきそうですが、

すでに時間帯別のデータがクラウド上に蓄積されているわけで、客数予測ができることから、「混んでから 応援を要請」するといった、お客様を待たせることはありません。

また、突発的な部門間応援も激減することから、店長をはじめとした、管理職の残業も極めて少ないのです。

今、こういったことが 業界のスタンダードになりつつあり、好むと好まざるにかかわらず、これまでの 人についた仕事の積み上げをしている企業は着実に減ってきています。

大事なことは、こういった揺るぎないシステム構築をし、上手く運用していくためには、地盤からしっかり調査し、そこに基礎を打っていくコトを忘れてはならないということです。

時代はすでに その流れになっていて、それは誰も止めることができないということです。

さあ、貴社ではまだ、表面的な真似をして、やり直しを繰り返しますか?それとも、土台からきちんと積み上げゆるぎない企業基盤を再構築されますか?


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